屋根のカバー工法とは?施工できる条件・時期・費用の目安を解説
2020/05/31
屋根のカバー工法とは?
屋根のカバー工法とは、既存の古い屋根の上から新しく軽量な屋根をかぶせる(カバーする)屋根工事の工法の一つです。
既存の屋根を撤去・処分する手間や費用が発生しないので、その分工事費用や工事期間を抑えることが可能となります。
一般的な戸建住宅の屋根リフォームでは、コロニアル(スレート)屋根の上に金属屋根(ガルバリウム鋼板)をかぶせる工事が多く行われています。
金属屋根を用いる場合は板金工事業者(板金工と呼ばれる職人)が施工を行います。
山口板金もその屋号の通り「板金工事」を得意としております。
カバー工法が行える条件とは?
工事費用や工事期間を抑えることができるカバー工法ですが、すべての屋根に施工できるわけではありません。
以下ではカバー工法が施工できる条件について解説します。
瓦屋根には施工できない
まず、瓦のように屋根が波打っていて水平ではなく、釘を打てば割れてしまうような素材の屋根には施工することができません。
また瓦屋根は重量のある重い屋根ですので、その上に屋根をかぶせるカバー工法を行うと耐震性の観点から問題があります。
カバー工法が行えるのは、スレート屋根、金属屋根、アスファルトシングル屋根、ジンカリウム鋼板屋根などです。
下地が痛んでいる屋根には施工できない
また、上述のようにカバー工法は「既存の古い屋根の上から新しく軽量な屋根をかぶせる」工事です。
そのため築年数が古い、もしくは屋根下地が傷んでしまってる場合にはカバー工法を行うことができません。
屋根表面だけが綺麗になっても、外からは見えない屋根下地が傷んでいてはリフォームによる効果も薄く、また数年で屋根材を全てはがすような大掛かりな工事が必要となります。
この場合はカバー工法ではなく屋根下地まで全て新調・修繕する屋根葺き替え工事を行うこととなるでしょう。
このような理由から、トタン屋根は下地まで傷んでしまっている場合が多いため、カバー工法を行う事はほとんどありません。
一度カバー工法が施工された屋根には施工できない
カバー工法を一度行ってすでに屋根が二重になっている屋根に再度カバー工法を行うことはできません。
そのためすでにカバー工法を行った屋根のリフォームには葺き替えを行うことになります。
屋根カバー工法を行う適切なタイミングとは?
では具体的に屋根のカバー工法は新築、もしくは前回の屋根工事からどれくらいのタイミングで行うのが良いのでしょうか?
お住まいの周辺環境によっても前後しますが、築後10年未満ではカバー工法を行うには少し早いです。
しかし、海沿いなど風が強い地域、風に対して弱い屋根材を使用している場合は築後数年で屋根が剥がれるというケースも稀に起こります。
海沿いや高台など、建物周辺に風を遮るものがないような環境下では、定期的に屋根をチェックすることをお勧めします。
屋根の不具合が小規模の場合は部分的な修繕、不具合箇所が多い場合は耐風性のある屋根材でカバー工法を検討しましょう。
一方、築後10年~20年はカバー工法を行うのに最も適したタイミングと言えます。
この頃になると割れやヒビ、剥がれなど不具合が顕著になってきます。
瓦は耐用年数が50年以上と非常に長いですが、それ以外の屋根材は耐用年数が平均で15〜20年ですので、どれだけ穏やかな環境下でも屋根材自体が寿命を迎えるのです。
逆に、この時期を過ぎても屋根に対してメンテナンスを行わなければ、不具合はさらに悪化するため下地にまで悪影響を及ぼし、引いては雨漏りなどの原因となり得ます。
築後10年~20年で一度屋根診断を行い、適切なタイミングでメンテナンスを行うようにしましょう。
屋根カバー工法の費用目安
使用する屋根材や既存の屋根の状態によっても変動しますが、屋根カバー工法の費用は、
屋根の平米 × ¥10,000 + 足場代(15~20万円) = 左記金額 × 消費税
で算出することができます。
屋根の痛みがひどい場合には「野地板増し張り」を行いますが、その場合は上記の¥10,000を¥12,000に置き換えた計算式がおおよその相場となります。
屋根の面積が80~100㎡程度の一般的な戸建ての場合、約80〜120万円程度が目安です。
屋根面積のほかに使用する屋根材(ガルバリウム鋼板・断熱仕様など)種類や、屋根形状・勾配・複雑さなどによって異なります。
上記以外にも「屋根の構造」「使用する屋根材」「周辺環境(足場の設置しやすさなど)」によっても価格は変動するので、あくまでも目安として覚えておきましょう。
カバー工法のメリット・デメリット
カバー工法のメリット
屋根カバー工法は、既存の屋根を撤去・処分せず、その上から新しい屋根をかぶせる工法のため、撤去費用や処分費用がかかりません。
その分、工事全体の費用を抑えやすい点が大きなメリットです。
また、既存屋根の解体作業が不要なため、工期も比較的短く済みます。
カバー工法を行うと、施工後は既存屋根と新しい屋根の二重構造になり、遮音性や断熱性が向上するといったメリットもあります。
カバー工法のデメリット
カバー工法は既存の屋根下地をそのまま利用する工法のため、下地が傷んでいる場合には施工することができません。下地の状態によっては、カバー工法ではなく葺き替え工事が必要となります。
また、カバー工法は屋根が二重構造になるため、次回の屋根リフォームではカバー工法を選択できず、将来的に葺き替え工事が必要になります。
まとめ
屋根のカバー工法は、既存の屋根を撤去せずに新しい屋根を重ねることで、費用や工期を抑えられる屋根リフォーム方法です。
ただし、すべての屋根に施工できるわけではなく、屋根材の種類や下地の状態によっては適用できないケースもあります。
特に、瓦屋根や下地が傷んでいる屋根、すでに一度カバー工法が行われている屋根では、カバー工法ではなく葺き替え工事が必要となります。
一方で、築後10〜20年程度で下地の状態が良好なスレート屋根や金属屋根であれば、カバー工法は有効な選択肢となるでしょう。
屋根の状態は外から見ただけでは判断が難しく、適切な工法は建物ごとに異なります。
大切なのは「工法ありき」で考えるのではなく、現在の屋根の状態を正しく診断したうえで、最適な工事方法を選ぶことです。
屋根リフォームを検討する際は、まずは専門業者による点検・診断を受けることをおすすめします。
【関連記事】
屋根リフォームの種類(カバー工法・葺き替え・塗装)と選び方については下記の記事をご覧ください。

